知らないと損するかもしれない経費の考え方

「これって経費になるんですか?」
日々の相談の中で、実はよく聞かれるのがこの一言です。 経費について「知らなかったために損をしていた」というケースは意外と多く、逆に「経費になると思い込んでいたら実は違った」というケースもあります。今回は、経費について知っておくと得をする、いくつかの考え方をご紹介します。
① 10万円以上のものは、一括で経費にできない
パソコンや机、車両など、10万円以上する資産を購入した場合、原則として購入した年に全額を経費にすることはできず(②の例外は除きます)、「減価償却」という方法で、耐用年数に応じて複数年に分けて経費計上します。 「経費になるから」と一括で経費に計上してしまうと、後から修正が必要になることがあるため注意が必要です。
② 青色申告なら、40万円未満は一括で経費にできる特例がある
一方で、青色申告を行っている一定の要件を満たす中小企業者・個人事業主は、「少額減価償却資産の特例」を使うことで、購入した年に全額を経費にすることができます(年間合計300万円が上限です)。 この特例の対象となる取得価額の基準は、これまで30万円未満とされていましたが、令和8年度(2026年度)税制改正により、2026年4月1日以後に取得する資産については、40万円未満まで対象が広がりました(あわせて、対象となる法人の従業員数要件も500人以下から400人以下に見直されています)。 「30万円未満でないと使えない」という以前の基準のまま思い込んでいると、本来一括で経費にできるものまで数年かけて分割償却してしまい、その年の節税効果を活かしきれないことになります。
③ 交際費と会議費の判定基準を知っておく
取引先との飲食代は、「交際費」として扱われるか「会議費」として扱われるかによって、税務上の扱いが変わります。 2024年4月以降、1人あたり10,000円以下の飲食費であれば、一定の書類(参加者・目的などの記録)を残すことを条件に、交際費ではなく会議費として全額を経費にできる基準が設けられています。 なお、法人の交際費は原則として損金に算入できませんが、資本金1億円以下の中小法人には、年800万円までの交際費を全額損金にできる特例(または接待飲食費の50%を損金にできる特例)が用意されています。個人事業主の場合は、こうした上限はなく、事業に関連する交際費であれば全額を必要経費にすることができます。
④ 経費にできないと思い込んでいるものが、実は経費になることもある
「プライベートの支出だから」と思い込んで経費にしていない支出の中にも、業務との関連性を説明できれば経費にできるものがあります。
- 業務に直結する資格取得費用やセミナー・研修の参加費
- 業務専用のユニフォームや作業着(一般的な服装として着用できないもの)
- 取引先への訪問や出張にかかる交通費
「なんとなく経費にならない気がする」と決めつけず、業務との関連性を整理してみることが大切です。
⑤ 逆に、経費にできないものにも注意する
反対に、経費にできると誤解されやすいものもあります。
- (個人事業)自身の生命保険料(経費ではなく、所得控除の対象になります)
- (個人事業)事前の届出なく支払った、生計を一にする家族への給与で一定金額を超えるもの
- 事業に関係のない、純粋なプライベートの飲食・娯楽費
こうした支出を経費に含めてしまうと、税務調査で否認されるリスクがあるため注意が必要です。
経費にできるかどうかの判断において共通して重要なのが、「事業のために使った」ことを説明できる根拠です。 領収書だけでなく、誰と・何のために使ったかのメモを残しておくことで、経費として計上した理由をあとから説明しやすくなります。
まとめ
経費についての正しい知識を持っておくことで、
- 減価償却や少額減価償却資産の特例を活かした、有利なタイミングでの経費計上
- 交際費と会議費の判定基準を踏まえた、適切な処理
- 経費にできると気づいていなかった支出の見直し
- 経費にできないものを誤って計上してしまうリスクの回避
につなげることができます。
「この支出が経費になるか判断に迷っている」「経費の処理を一度見直してほしい」という場合は、当事務所までお気軽にご相談ください。日々の記帳から確定申告・決算まで、状況に合わせてサポートいたします。


